2018年も、ブログのおまけとして家事小説を更新していきます。タイトルは「√365(ルートさんびゃくろくじゅうご)」。
365人の女性(29-30歳)の「人生のひとコマ」✕「家事」をテーマに書いていくものですが、今年はゆるめに週1更新を目安にします。なので、実際にご紹介できるのは50人程度。序章・終章をのぞき、それぞれ1話完結でお読みいただけます。
目次の下に「序章」があります。



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CharacterDesign & Illustration : イラストレーター・ねこがえるさん



目次

序章・終章をのぞき、1話完結です。

序章   3つのルール
1月1日 雪降るキッチン
1月8日 境界線
1月15日 女正月
1月22日 ハイヒールの野心
1月29日 ハンバーグ・コンプレックス
2月5日 さじかげん
2月12日 小さな宝物
2月19日 メニューは、決まっている。
2月26日 私を好きになって。
3月5日 つばきと山茶花
3月12日 曇っためがね
3月19日 芽吹きと苦味
4月2日 四月の雪
4月16日 こころの輪郭
4月30日 影のさざ波
5月7日 レアクローバー
Coming Soon...




序章:3つのルール



 除夜の鐘が鳴り出した。
 ぐっと力を込めて窓をいっぱいに開けると、風と一緒に雪が吹き込んできて、重たく乾いた部屋の空気をさわやかに塗り替えていった。熱くほてった頬の上で雪のかけらがじゅわっと溶けていくのがわかる。

 窓の向こうに立ち並ぶ家々、その一軒一軒が顔見知りだというくらい狭いこの街だ。大騒ぎになるのは目に見えている。でも悪い気はしなかった。そうなればなるほど、あの人たちはこの街に居づらくなるのだから。
 愚かしいと思うかもしれない。でも私にはこれしか思いつかない。明日からも、学校に行くくらいだったら。かんたんなことじゃないか。


 窓のへりに座る。この下には雪に隠れたコンクリートの地面がある。途中に出窓があるからクッションになるかもしれない。でも植木鉢の上なんかに落ちたら痛そうだ。そもそも、すぐにラクになれるものなのだろうか。高所恐怖症の私にとっては、それこそまっ暗な口を開けた闇のように恐ろしく思えるけれど、3階の、この程度の高さで。
 そう思い至るとふいに足ががくがくと震えだした。まずい、早くしなければ。除夜の鐘が鳴り終わらないうちに。気持ちが高ぶっているうちに。震えがひどくなる前に!


 どれくらい、時間が経ったのだろう。確かに飛んだはずだったのだ。何が起こったのかわからず、恐る恐る薄目を開けた。

 最初に見つけたのは「目」だった。
 逆さまに浮いている女の子。真冬だというのにまっ白なノースリーブのワンピースを着て、長い髪をしっとりと下ろしている。何よりも特徴的なのはその、虚ろな目。すべてを諦めたような目だった。

 そして彼女を取り巻く空間もまた不思議だった。空が下で、地面が上にあり、大樹が浮いていて、崩れた家が飛んでいる。

 私の意識がはっきりしたのを確認したようだった。次の瞬間、彼女は「今日は大晦日でしょう。いつもと違うの。特別な魔法を見せてあげる」と、口元だけを笑顔の形に繕ってそう言った。

「だれ?」
「質問は禁止。それから”今”のあなたに選択の余地はないわ」

彼女がぴしゃりとそう言うと、口が重たく縫いつけられたように、開かなくなった。それを見届けた彼女は淡々と、事務的に続けた。

「まずルールその1。
あなたには明日から365日、毎日違う女性の人生を送ってもらいます。
そうね、あなたの存在は霊のようなものだと考えてくれればいいわ。その女性の人生に対して、なんの干渉もできない。ただ感覚や感情は共有します。

ルールその2。
体験する人生は、すべて29~30歳の女性のものよ。あなたのちょうど2倍生きていることになるわね。思考もライフスタイルも、何もかもが違うわ。

ルールその3。
記憶は毎日消去されます。たとえば1月1日に体験した人生のことを、あなたは2日にはすべて忘れている。干渉することはできないのだから、もちろんメモなんかを残すことはできない。
これは毎日をフレッシュな気持ちで迎えてほしいというこちら側の配慮だということを理解して。もっというと、あなたの自我のようなもの、それ自体が失われた状態と言ってもいいわ。他人の人生を送っている間、あなたは、あなたとして考えたり、感じたりすることはできない。

それから最後に。365日の人生を体験し終えたら、すなわち、1年後の大晦日の夜に、あなたの1年分の記憶がすべて戻ります。
あなたが選択するのは、その後よ」

そこまでをひと息で言い切ると、彼女は少し疲れたように「もういいわ、行って頂戴」と追い払うような仕草をした。
顔色は青白く、やつれて見えた。

そこで私の意識は遠のいていったのだった。
深い海の底へ向かってとろとろと沈み込んでいくような感覚だった。水面のほうだけが明るく、そこに向かって手を伸ばしながら落ちていくような。


そして、次に目覚めたときには……。





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【著書】---暮らしをラクに楽しくするヒント集---

365日のとっておき家事: もっと暮らしやすい家と時短のしくみづくり (単行本)
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この本を読むと「やりたいことがたくさんあるのにうまく回らない」という悩みが解決します。1日にひとつだけ、少し特別なことをするのです。これを「とっておき家事」と呼びます。でも、それを続けていくためにはこつがあります。そこで、とっておき家事をどなたでも続けやすいようにメソッド化し、今日やりたい家事テーマがすぐに決まる"公式ガイドブック"としてつくりました。


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【Q&A】 ---このブログについて---

Q. このブログは、どんなブログ?

このブログのキーワードを3つに絞るとしたら、「とっておき家事」「ノート術」「時間術」です。
私が「とっておき家事」で行った内容と気づきがおもな更新内容です。なるべく読みものとして楽しんでいただけるよう、心がけています。

Q.だれが書いているの?

三條 凛花(さんじょう りんか)といいます。整理収納アドバイザー1級の資格を保有しています。コラムやエッセイを書くのがおもなお仕事です。
ほんの数年前まで、足の踏み場もない部屋に住み、日々の家事もままならない状態でした。そこから自力で脱出し、人並みに家事ができるように。今の私にとって、家事とは「心を整えるツール」と呼べるくらい、かけがえのないものになっています。(もちろん、面倒だ!と思うときもありますが)
そのため、このブログでは掃除術やお料理術などを紹介することはほとんどありません。家事そのものというよりも、どうしたら家事が楽しくラクになるのか? というヒントを日々研究していくブログだとお考えください。

Q.とっておき家事とは?

とっておき家事は、1日ひとつ、ふだんの家事に加えて少しだけ特別なことをするものです。「家事」とついていますが、どこまでを「とっておき家事」と設定するかの線引きは自分で決めます。私は「家事=イエのコト」とし、家で行うこと全般や家族のことなど幅広く取り組んでいます。さらに詳しく知りたい方は、著書『
365日のとっておき家事』をご覧ください。また、ほかの方の実例はtwitterのハッシュタグ「 #とっておき家事 」をご参照ください。

Q.とて家事ラボとは?

「とて家事ラボ」は、とっておき家事に挑戦してみたい読者さんをサポートするために作った無料のグループです。次回の募集は2018年12月です。


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最後までお読みいただきありがとうございました。
今日も素敵な1日になりますように。



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